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HMスクーナー ピクル「ストラクチャーモデル」を作る!!

☆ HMスクーナー ピクル 「ストラクチャーモデル」 を作る !! ☆ 


JoTiKa社の”HMスクーナー ピクル”のキットは模型としては一般的な「バルクヘッド・フレーム」の構造で製作します。このキットには6枚組の図面が同梱されており、この図面をもとにして「ストラクチャーモデル」の図面を別途に作図し、並行して製作しています。
この「ストラクチャーモデル」はかつて17、18世紀に造船所の技術者たちにより製作された「ネイビーボードモデル(Navy Board Models)」と呼ばれた官船模型に近い正確性が求められるものです。キールやフレームの組み立て方などの製作工程のタイプはいくつかありますが、その中でも比較的短期間で製作できる製作者によるオリジナルな「内型法」にもとづいています。「ストラクチャーモデル」に関心のある方はこちらのページもぜひご覧ください。

HMスクーナー ピクル ストラクチャーモデル HMスクーナー ピクルのストラクチャーモデル図面

☆ 「ストラクチャーモデル」 とは? ☆ 

欧米では「ストラクチャーモデル(構造模型)」のことを「プランク・オン・フレーム・モデル」と呼称しています。フレーム材やビーム材、カーリング材などを剥き出し(スケルトン)で製作し、外板や甲板は一部しか被覆していません。この模型の起源は17、18世紀の造船所技師たちの手で作られた「ネイビーボード」と言われる官船模型に遡ることができます。船の建造を始める前にあらかじめ模型を製作し、船の構造や機能・性能などを吟味、検分するためにウェールズ(腰板)の下は骨組みが剥き出しになっています。それらの古い時代の模型は海外の海事博物館で今でも見ることができ、素晴らしい彫刻類や建艦技術の迫力に圧倒されます。リギングなどの艤装部品もごく一部の模型は往時のまま残されている貴重な史料的価値が高いものがあります。正確な製作技術が求められ、モデラーとしては一度チャレンジしてみたくなる模型です。

「セント・ジョージ号」 ロジャース・コレクションの中でも一級の
模型。当時の艤装を完全にそのまま残していると言われている。
二級戦列艦模型の上部甲板の部分(1669年頃製作の模型)
17世紀中頃のオランダ艦のフレーミング図面 ネイビーボードモデルの様々なフレーミングのタイプ
(実船のフレーミングとは異なる)

HMスクーナー ピクル(H.M.Schooner Pickle) 「ストラクチャーモデル」 の製作記録 


Step1

フレーム取付の準備作業として”内型”を最初に製作します。

内型フレームの切抜き、キットより中央部のフレームを追加しています。 内型フレームは後に壊して取り除くため、
木工用ドリルで穴を開けておきます。
内型フレームの組立ての船底部、
フィラー(充填材)は幅調整用として接着しません。
内型フレームの組立てを上部から見る
内型フレームの外板貼り完了を上部から見る、
外板材はヒノキ2mm×5mm
外板同士は出来るだけ接着しないように釘を併用して、貼り付けます。
内型フレームの外板貼り完了を船底部から見る、
サンドペーパーで仕上げる前に釘は全て抜いておきます。
内型の外板が貼り終わったら、型板を当てながら各フレームを整えます。 内型の上面にフレーム割付図を貼り付けます。


Step2

切り抜いたそれぞれのフレーム部材を接着し、整形したフレームを内型に取り付けます。
カント・フレーム、キール、カウンターも調整しながら取り付けていきます。

 左側:各フレームの分解図をカツラ材の木のハガキに張り付けたもの
 中央:フレーム部材の切抜き
 右側:フレームの組立(ダブル・フレーム)
ルーターにてフレーム内側の調整、
各フレーム間にはバルサ材のスペーサーを挟み込む。
切抜きの完了したフレーム(スクェア部)とキール 内型にスクェア・フレームとキールを取付
カント・フレームの組立(船尾側) カント・フレームの組立(船首側)
フレーム取付完了(上部より) フレーム取付完了(船底側より)
船尾カウンター部分とフレーム キールの取付完了(船尾側)
キールの取付完了(船首側) ウェールの取付完了、
キットのガンポート割付図のコピーを貼り付けて、
フレームの仕上げ高さの位置を割り出す。
ウェールの貼付完了(船尾側)


Step3

ウェールを取り付けた後は内型を壊しながら、取り外します。

フレームを留めていた釘を抜く、
フレームにブルワークの上端をマーキングして、
ルーターの丸のこでフレーム上部の不要部分を切り取る。
内型のバルクヘッド・フレームの解体中、
ニッパー(先端が水平の工具類)でフレームやキールを切り取っていく。
フレーム、キールの撤去完了、
内型の外板材もニッパーで切断しながら撤去。
内型の撤去完了(側面側)
内型の撤去完了(上面より)


Step4

甲板の梁受け材、マスト・ステップ、ブレスト・フックなどの船内側の部品を正確に取り付けます。

ブラック・ストレークの上部ガンポートの回りの外板貼り、
ウェールの下部には1枚だけ外板を貼り付けて、
アッパー・ガンデッキのハンギング・ニーを目隠しする。
バルサ材でアッパー・ガンデッキの梁受け(Beam shelf)の
治具を船底に止めて、梁受けの位置決めをする。
ロワー・デッキの梁受け材も同様に取付け ガンポートの切込み完了、
梁受け材の上下に内板貼り、これはアッパー・デッキ・ビームと
ハンギング・ニーの受け材。
梁受け材、キールソンの取付完了(上部より) マスト・ステップ、ブレスト・フック、チャッチ、ロワー・デッキ・ビーム等の
取付完了(上部より)
マスト・ステップ、ブレスト・フック、チャッチ、ロワー・デッキ・ビーム等の
取付完了(船首側の細部)
ロアーデッキに設置するGalley fire hearth
アッパーデッキを取り付けるとほとんど見えなくなるので、
別に予備を作ってある。                   
   
ロアーデッキに、Galley fire hearth,Hatchway,Mast costsを
取り付ける。                            
アッパーデッキとロアーデッキの「甲板割付図」 
ビーム材、ニー材等の配置がよく理解できる。


Step5

ビーム材やニー材等のアッパーデッキの部品をいろいろ取り付け、いよいよストラクチャーモデルモデルの完成に近づいていきます。

アッパーデッキの部材
左上:Lodging knee 左下:Hanging knee
デッキビームのキャンバーは板材より切り抜き。
船首部、船尾部はデッキプランに従い、船体外の作業台上で組立て
船体外で組立てた船首部、船尾部を船体のデッキ受けにセット 未施工部分の中央部、船首部(先端)、船尾部(後端)を
船体内で組立て。                      
ガンポートの仕上げ、キャッピング・レールの取付完了 ラダーの製作
ラダーの取付け、スターンカウンターの仕上げ


Step6

甲板上にポンプ、ウィンドラス、ビット、昇降口、スカイライト、ロアーマスト等の艤装品を取り付けて、ストラクチャーモデルの完成です。

ポンプの自作部品               
金属部品は、0.5mmの真鍮版より切り出し。
ストラクチャーモデルなので、ポンプは船底まで届く長さとなる。
ウィンドラスの自作部品類 ビット類の部品。                    
ビット支柱は下層甲板のビームまでの長さとなる。
ビット及びウィンドラスの完成写真 自作チャンネルの部品類
昇降口の部品類。                      
屋根ガイド・ガイドプレートはキットの予備部品から流用
昇降口、スカイライトの完成写真
艤装部品をセットし、ストラクチャーモデルの完成 完成したストラクチャーモデル(右舷前方から)
完成したストラクチャーモデル(右舷後方から) 完成したストラクチャーモデル(真上から)
完成したストラクチャーモデル(船首部詳細) 完成したストラクチャーモデル(船尾部詳細)
完成したストラクチャーモデル(船尾側) 完成したストラクチャーモデル(右舷側面)


このページでご紹介しているストラクチャーモデルは製作者のオリジナルによる”内型法”によって製作されたものです。  
ドックヤード・モデル、ネイビーボード・モデル、プランク・オン・フレーム・モデルと呼ばれる構造模型の製作技法には    
様々なパターンやバリエーションがありますので、興味のあるモデラーは下記の参考資料にあたって見るのもよいでしょう。


ストラクチャーモデルの製作の参考資料

国内で発行された「ストラクチャーモデル」に関する図書資料は限られていますが、海外では図面も含めると結構な点数が発行されています。詳細は「船の図書資料室」に掲載していますので、ぜひそちらをご覧ください。このセクションではその一部をご紹介します。

タイトル 模型の船/この魅力の世界 タイトル 帆船模型 <カラーブックス 573>
著者名 ガイ・R・ウィリアムズ/千葉勉 訳 著者名 東康生・竹内久 共著
出版社 実業之日本社(丸善通商) 出版社 保育社
コメント 世界の海事博物館所蔵のものから模型の船とは何かをその歴史について書かれた本。(帆船模型スタジオMAmazon.co.jpから購入できます。) コメント 帆船模型の写真とその作り方を解説したハンディで楽しい文庫
タイトル The Built-Up Ship Model タイトル Plank-on-Frame Models and Scale Masting and rigging Volume 1
著者名 Charles G Davis 著者名 Harold A. Underhill
出版社 Conway 出版社 Brown, son and Ferguson, Ltd., Nautical Publishers
コメント アメリカの16門艦ブリック「レキシントン」のビルトアップによる製作の詳細をイラストとともに記述した本で、初心者向けではない。 コメント スクラッチで製作するプランク・オン・フレーム・モデルの製作テクニックについて書かれた数少ない手引書で、Vol 1とVol 2の二冊になっている。
タイトル Building Plank-on-Frame Ship Models タイトル Ships of the American Revolution and their Models
著者名 Ron McCarthy 著者名 Harold M Hahn
出版社 Conway 出版社 Conway
コメント 「HMS Cruiser」の図面作成からリギングまでその工程をステップバイステップで解説している。模型完成品はプランクオンフレームモデルにもかかわらず外板、甲板ともすべて隙間なく張ってある。 コメント 1776年のアメリカ独立後の大陸海軍のハンコック、オリバークロムウェル、コンフェデレーシーなど数多くの図面と模型を製作したハロルド・ハンの著書でその独自の製作法は注目に値する。
タイトル Henry Huddleston Rogers Collection of Ship Models タイトル Navy Board Ship Models 1650-1750
著者名 United States Naval Academy Museum 著者名 John Franklin
出版社 Naval Institute Press 出版社 Conway
コメント 1650年-1850年間のイギリスのアドミラルティ・スケール・モデル108点がH.ロジャース大佐からU.S. Naval Academyに寄贈された。その全容が医療用カメラを駆使して撮影された貴重な資料。 コメント イギリスの「アドミラルティモデル」または「ドックヤードモデル」と呼ばれる史料的な価値の高い20点以上の模型をグレード別に分析・解説している。その精巧な彫刻類には圧倒される。
タイトル HMS Sussex 1693, Building A Navy Board Model タイトル 17th and 18th Century Ship Models from the Kriegstein Collection
著者名 Gilbert McArdle 著者名 Arnold and Henry Kriegstein
出版社 SeaWatchBooks 出版社 SeaWatchBooks, LLC
コメント ギルバート・マッカードルの写真や図面、テキストによる1693年イギリスのHMS Sussexのモノグラフィ。 コメント Kriegstein兄弟所蔵の17・18世紀の帆船模型コレクションの写真集で、その中には本の中に折りたためるユニークな帆船模型もある。
  タイトル The 74-Gun Ship Bellona(Anatomy of the Ship)   タイトル La Renommee Fregate de 8 1744
著者名 Brian Lavery 著者名 Jean Boudriot
出版社 Conway 出版社 ANCRE(Collction Archeologie Navale Francaise)
コメント   イギリスの七年戦争の間の1760年に進水した3等級戦列艦「ベロナ」は74門艦クラスとして初めて成功を収め、その後20年間以上標準艦として建造され続けた。この書もスクラッチ製作者のためのモノグラフ図面集 コメント   ジャン・ブードリオ著の1744年の8ポンド砲搭載のフリゲート艦「ルノメ」のモノグラフィで、8-12ポンド砲搭載のフリゲート艦には「La Venus」や「Belle-Poule」などがある。
タイトル Deane's Doctrine of Naval Architecture, 1670 タイトル Album de Colbert 1670
著者名 Brian Lavery 著者名 Anonyme
出版社 Conway 出版社 ANCRE(Omega)
コメント 1670年発行のAnthony Deaneの船舶建造技術の著作を多くの図版とともに編集、リプリントしたもの。 コメント パリの海事博物館に保存されている貴重な1660年代のルイ14世時代の「海軍提督コルベールのアルバム」と呼ばれる艦船図版集のリプリント版で、往時の艦船建造の詳細を知ることができる。